裁判関連 » 2009/07/17 住民訴訟 法廷報告

住民訴訟 法廷報告

09年7月17日(金) 午後2時から 522法廷
傍聴 34名
提出された文書  被告側  準備書面(7)    乙号証
    原告側  証拠説明書 甲116号証 岩見文献「場所」と「場」の街づくり
         甲117号証 再開発地区計画の手引き

本日は、岩見良太郎先生の意見書に基づく証言。 主に、原弁護士が質問した。

  1. 総論部分
     わが国の都市計画はもともと規制力の弱いルーズなものであったが、80年代以 降、さらにいっそう規制緩和が進められた。本件で適用された地区再開発計画は、そ の象徴である。
     都市計画が市場メカニズムに委ねられ、経済政策に従属してきたことが、我が国の 都市計画の最大の欠陥。
  2. 岩見意見書の公準の考え方と内容
     すべての都市計画は、「公共の福祉」をうたっているが、それに反する事業が多々 ある。こうしたことが起こるのは都市計画法1条の規定は抽象的すぎるから。そこで 公共性を判断するより具体的な基準として5つの公準を立てた。

    「住民参加」について
    住民にとって住みよい都市とは、それぞれの都市への要求が満足される都市であり、 しかも、その要求は住民によって異なり、多様である。とすれば、それらの要求を少 数の専門家がことごとく把握し、それを計画に反映することなど不可能。参加によっ てのみ、それはなしうるのであり、参加はまちづくりの根本原理である。

    「営利事業としての再開発」について   意見書P10参照
    わかりやすく言えば、株式会社と同じ原理で動いているということ。株式会社はお金 を出資し、会社をつくり、事業をし、その利益を配当として金銭で分配する。再開発 事業は、お金でなく、土地や建物を出資し、最大限の利潤が得られるよう再開発事業 という事業をおこない、事業の成果は、金銭ではなく、床を分配する。これが権利変 換である。 土地と建物を不動産価値とみなし、その増進のみを目的とする再開発は、公共的な利 益と本質的に矛盾する。

    「超高層とコミュニティ形成」について
     コミュニティ形成の観点から超高層を見ると、コミュニティが育つのは一般的に難しい。
     まして、この再開発では人工地盤上に作られるので、心理的にも、物理的にも周辺 地域との連続性に乏しく、周辺から隔離された孤立的環境を作り上げる。

    「法制度の適切な適用と運用がされたか?」について 公準3 P32参照
     再開発地区計画は、本来、工場跡地や貨物操車場跡地など、大規模遊休地を再開発 の対象として予定していたものである。にもかかわらず、本事業の施行区域のよう に、戦前から風致地区に指定され、しかも、元々は都市計画によって公園用地として 定められていた地域に適用することは制度の本来の趣旨を逸脱するものである。

    規制緩和(高度地区の撤廃・容積率の緩和)をするに必要な正当な理由
     「都市環境の整備・改善及び良好な地域社会の形成に寄与しつつ、良好な市街地の 形成に貢献する」ことが必要。具体的には、ミニマムの条件として、「土地利用転換 に当たって基本となる主要な都市基盤施設」(2号施設)の整備。さらに大幅な規制 緩和のためには、『開発地区計画の手引き』に示しているように、「市街地の環境の 改善・向上」「美観の創出」「地域の交通条件の改善」「文化の創造」「都市におけ る諸活動の効率化」「良好なコミュニティの創出」「地域社会の活性化」「その他」 という8つの項目を満足しなければならない。本件ではこれらの条件を満足していな いから、容積率の倍増は正当ではない。

    「地区計画について、区の責任は?」
     再開発地区計画は、「協議型都市計画」といわれるように、容積の緩和と引き替え に、どこまで環境への貢献を引き出すか、それが開発主体と行政の協議によって決定 される。 したがって、どこまで都市環境の向上を実現しうるかは、世田谷区が市民の立場に 立って、どこまで強力に交渉しうるかにかかっている。その意味で、世田谷区の役割 は決定的である。しかし、規制緩和一辺倒になっており、区は責任を果たしていない。

    「施行区域の設定について」
     都市再開発法3条によれば、施行区域に4つの条件がある。  そのひとつに、「区域内に十分な公共施設がないこと、区域内の土地の利用が細分 化され、利用状況が著しく不健全であること」があげられているが、II街区、III街区 は全く該当しない。ほとんど東急の土地であり、細分化も不健全も当てはまらない。 区域指定は正当性を欠く。

    「それなのに、II街区とIII街区を含めた理由は何か?」
     公的な補助を得るため。I街区の権利者をIII街区に移し、駅ビルを独占するため。 東急の私的利益のために、こうした大規模な再開発がもくろまれたとしかいえない。 公準4の公平性に違反している。

    「IIa街区の変更は、可能か?」
     現在の経済状況からして、IIa街区の事業化はリスキーである。規模の縮小が必要。
     区長は速やかな変更を。

  3. これらのやり取りの後、被告側の代理人は、「これはあなたの意見ですね。都市 計画審議会などで、公準は認知されているのか、」などと聞いた。 その他の被告側の質問に答えて、大切な証言があった。
    • 新しく住む人と周辺の人の要求をぶつけてみんなで議論してよい町になる。住民のコミュニティの強化こそが持続性を支える。
    • 都市計画と言うのは、公共の福祉のために制限をすること。私的利益を優先することを繰り返すと、都市はよくならない。

今後の予定  9月15日、 行政法の学者、白藤博行先生の意見書を提出する。
          裁判官「意見書を拝見します」
最終口頭弁論  11月20日 1時45分から

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