裁判関連 » 2007/05/30 意見陳述 原告訴訟代理人 渕脇みどり弁護士

平成19年(行ウ)第160号公金支出差止請求事件
2007年05月30日
原告訴訟代理人   弁護士 渕脇 みどり

東京地方裁判所民事3部御中

 原告代理人の弁護士 渕脇みどりです。ただいま4人の原告の意見陳述を受け、本件再開発事業に関する、及び本件訴訟の特質を申し述べます。

第1 本件再開発事業の違法性は大きく言って以下の2点です。

  1.  ひとつには施行者である被告再開発事業組合は組合という形は取っていますが、事業予定地の85%以上を東急電鉄、東急不動産らの東急グループが所有しており、その開発目的に公共性が全くないという点です。
     その開発目的は「大規模な空閑地が有効利用されていない。」としてその活用のためとしていますが、これはまさに、東急の二子玉川園閉園後の救済事業であり、私企業の利潤追求行為以外のなにものでもないということです。そのために世田谷区と東急は昭和60年に密約を結び、都市計画公園の位置変更などを合意して違法行為を重ねて事業を遂行してきました。従って、地権者のなかにも本件事業に反対する地権者も多く、強引な説得作業が行われてきました。
  2.  もう一点はその事業規模が地域にそぐわない、六本木ヒルズの広さに匹敵する11.2ヘクタールという巨大ともいうべき超大規模なものであり、さらに風致地区の周辺環境をまったく顧みず、最高49階建て、地上150mという超高層マンションを含む7棟ものビルを乱立させるという異様な事業内容であるため、まち全体の自然、文化、景観を破壊し、周辺住民の権利を著しく侵害するということです。
     本件再開発事業予定地周辺に居住する住民66名は既に2005年10月17日に周辺住民が本件再開発事業組合に対し、事業差し止めの訴訟を提起し、現在継続中です。

第2 本件住民訴訟の特質はかかる違法な事業の遂行は本件再開発事業予定地周辺住民の問題にとどまらず、世田谷区民全体にとっても、区の公金支出として極めて重要な問題だということです。

 世田谷区は平成16年度までに本件再開発事業に合計3億6520万円を支出しており、この中には「平成13年度の基本設計費用3億2,800万円」も含まれています。
 平成17年度には5億39,159,000円を支出しました。 平成18年度予算には4,416,460,000円を計上していました。現在設立認可がでている事業(2−A街区を除く)だけで事業費810億円の4割約320億円が支出されようとしています。
 世田谷区の平成18年度の一般会計は2,148億1,900万円です。単年度で見ても平成18年度予算の44億円というのはその2%以上になる高額な割合を占めており、それがそのまま、前年度比の一般会計支出増の原因となっています。このような支出増、負担増が本件再開発事業終了まで継続されるのです。

第3 最後に本件訴訟にあたり、司法に期待することを述べます。

 まちづくりの概念も時代と共に移り変わってきました。都市再開発法が制定された昭和44年当時は、土地の高度利用の必要性が叫ばれ、その後、さらに建築規制全体の規制緩和の流れ、バブル経済 などの影響を受け、次々に広い空を切り裂くような超高層ビルが建設されるようになりました。  しかしながら、昨今世田谷区のまちづくり条例や、平成16年の景観法の制定に見られるように、今やまちづくりにとって実現すべき価値は何かという価値観が大きく変わってきました。
 超高層ビルについての、様々な問題点も実証されるようになりました。経済性の追求のみの観点から、高層ビルを乱立する本件再開発は、「まちづくり」ではなく住民が長い歴史の元に築きあげてきた財産である「まち」の破壊に他なりません。
 さらに夕張の例に見るように地方自治体の公金の支出の行方は住民の生活に密接に関わることであります。違法な支出は返還され、将来の支出は差し止め、再度、再開発事業そのもを見直すように求めることは納税者としての当然の権利です。
 従来、都市計画決定は「行政処分性がない」等といわれ、事前の住民の意見を聞く機会があるからといって、事後の司法のチェックには馴染まない等という議論がなされてきました。しかしながら、都市計画の名の下に、住民の意見を無視して、公共性のない事業が推し進められ、区民の血税が湯水の用に注ぎ込まれ、区民の生活を脅かす「まち壊し」が堂々と行われることは憲法が定める幸福追求権、環境権に反し、許されないことです。
 原告133名及びこれを支援する日本中の多くの国民は、司法がかかる時代の趨勢を適格に認知し、本件事業の違法性を断罪し、真に公共の福祉に資する再開発事業が行われるよう、充分に審理を尽くし、将来にわたるまちづくりの理念を実現するためにも、本件再開発事業に関する公金支出の差し止めを命ずる判決を言い渡されることを心より切望しています。

以上

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