裁判関連 » 2007/05/30 意見陳述 志村徹麿

陳述書

2007年05月30日
志村徹麿

  1. 二子玉川東地区の再開発計画は、「バブル・ユーフォリア」すなわち「資本主義のあぶくに有頂天」だった時代の悪しき産物です。世田谷区の前環境審議会会長は、私が傍聴した審議会の場で、「開発全盛期の遺物」だといったことがあります。この計画の内容も手続きも、昨今、国民的批判を浴びているバブル型大型開発の典型です。それが再開発区域の権利者だけでなく、地域住民、ひいては日本国民が平和的で文化的・健康的な環境で生きる憲法上の生存権を侵犯し、自然・住環境、歴史的・文化的環境を破壊し、人権と民主主義を侵害する違法・不当行為にあたることは、訴状にくわしく述べているとおりです。うたい文句とは正反対に「公共の福祉」を損なう、このような計画に税金を投入することなど、あってはならないはずです。
  2. 悪しき遺物、時代の進歩的な潮流に合わなくなったものは清算し、やりなおすのが当然です。都市計画の手続きも、やりなおせばよい。そうすることが、私たちの環境と生存条件の修復・確保、ひいては地球環境と人類の生存条件の確保につながります。
    ところが、再開発組合と行政は、この計画が違法、不当だという私たちの追及にたいして、とにかく形式的には手続きをふんできたという反論しかできません。説明不能におちいっています。
  3. 2004年6月の事業認可申請にたいして、私は、3点にわたって意見書を提出し、口頭陳述しました。(添付資料1参照)
    1. 「持続可能で環境保全・共生型の成長をめざすべき時代に」ふさわしくない計画であるから、やり直すべきだ。
    2. まんなかのIIa街区の計画を決められなかったことは、東急主体の事業者自身が認めるように「社会、経済情勢の変化」に適合しなくなったこの計画の破綻であり、都市再開発法が定める「一体」性を欠落させるものである。また、この計画が「景観阻害」「日照被害」「ヒートアイランド現象」「風害」「電波障害」「交通量増大に伴う大気汚染」「公害」「地下水脈の切断」「生態系への悪影響」「環境負荷の増大」をもたらすことは明白である。だから、やりなおすしかない
    3. そうするために、住民参画を抜本的に強化して、地域の特性を生かした未来志向型のまちづくりを進めるべきだ―という意見です。
    世田谷区から報告を受けながら事業計画の認可を判断する東京都の回答は、それまでの手続きの経過をのべるだけでした。10数ヘクタールの再開発区域のうち、東急各社が85%の土地を所有しているのに、「細分化した土地の共同化」のためというにいたっては、こじつけとしかうけとれない回答でした。
    150通近くのほとんどが計画に反対する意見書に対して、回答はほとんど同文のもので、あまりの説明不能に怒って、回答書を破り捨てたひともいると聞きます。
  4. 2005年3月に事業認可と再開発組合設立認可が出るまで9ヶ月かかったのは、異例の長さでした。意見書提出を受けて、都は「事業計画そのもの、周辺への影響、特に交通の流れについて」検討しているといっていました。では、これらの問題はどう解決されるのか。私たちはくりかえし、説明を求めました。しかし、いっさい説明はありません。唯一具体的には「駅前のタクシー乗り場」がどうなるか検討しているといった説明をうけました。が、それがどう対応されたかの説明もない。そもそもそんなことへの対応ですむ問題ではありません。訴訟の8から10ページに書いてあるとおり、現場は、国分寺崖線と多摩川に挟まれ、玉川通り、環状8号線、第3京浜道路、多摩堤通りに囲まれた低湿地です。いまでも渋滞がひどいところで、そこに開発交通量が増えれば、流入する車の逃げ場がない「排気ガスの袋小路」になることは容易に予想できます。
    多摩川沿いの多摩堤通りは、片道一車線です。それを、再開発計画地の横だけに25メートル道路に広げる計画です。その先は、上流の成城方面も、下流の田園調布方面も片道1車線のままです。150メートル、130メートル、100メートルの超高層ビルを建てるために、再開発予定地の隣接道路だけは広げておこうということです。
    このようなやりかたで、環境と街を壊し、人々の生存条件を悪化させることなどおかまいなしという再開発事業は、許されるべきでありません。
  5. したがって、司法が、本件のような都市計画事業で、行政の不法行為をただすことの意義はきわめて大きい、と考えます。日本の都市計画事業では、行政の裁量が過度に大きい。内務省主導の戦前・軍国主義の時代以来のことです。いま、戦前のような体制が「美しい」と心底思う人々が中心になって、そういう中身に憲法を変えようとするなか、国民多数に根付き、現に存在する憲法の規範にもとづいて、司法が本件で適切な判断を下すことは、行政の誤りをおさえ、日本の民主主義を前進させ、国のありかたを現憲法にもとづいてただしていくことにつながります。
  6. 端的な事例は、本件で、2000年の都市計画決定より13年もまえに、世田谷区と東急が「密約」をかわしていたことです。訴状の19から21ページに書いてあるとおりです。私たちが情報公開させ、その存在を知ったのは、都市計画決定より後でした。
    「密約」は複数あり、区議会にもいっさい報告しない、もちろん区民にも知らせないなかで、行政が東急と、このとんでもない再開発計画の「完成」まで「最大限の努力」を約束し、用途地域、都市計画公園の指定変え、道路事業など、そのための施策も覚書で約束していました。
    のちに区の幹部職員になったひとが「東急からおどかされて」これらの「密約」文書を交わした、といっています。
    区民不在の行政の専断、すなわち民主主義不在の行政権限による都市計画事業のあり方が、今日の事態を招いている、といっても過言ではないでしょう。
  7. 私たちは、世論に情報を提供しよびかけながら、都・区行政に対して、節目、節目でくりかえし、意見を述べ、要求し、話し合う様々な行動を続け、計画の見直しを提起してきました。ここ数年、行政が重ねてきた数々の無法については、訴状の21から23ページにあるとおりで、そこには環境審議会、権利変換、「天下り」などでの具体的な不法、不当行為が書かれています。
    権利変換段階での重大な権利侵害、違法行為について私たちは、昨年末から今年にかけて具体的な事例を指摘したくわしい申し入れ書を何通も提出し、都・区行政当局と話し合いを重ねてきました。(添付資料2、3参照)
    行政側は、権利変換では「財産が動くので全員同意が原則」(都民間開発課)だと私たちに表明してきました。行政は、当然ながら、こうした原則を厳格に守って「指導、監督」責任を果たすべきです。実際はどうだったでしょうか。
    昨2006年11月に、再開発組合が議決したとされる権利変換計画(基準)への賛成は、権利者総数66のうち、43でした。これは、2000年の都市計画決定の前に区から都にたいし口頭で説明されたという「権利者の4分の3が合意している」という数字はおろか、2003年に法定最低要件である「権利者の3分の2」ぎりぎりで事業認可を申請したときの数字にも達していません。
    そのうえ、この総会では、権利変換計画の公告・縦覧にあたり、公衆への縦覧を妨げ、関係権利者にたいしても自分の関係部分だけをみるように限定しようとする「付帯事項」を決議しました。
    再開発組合のこうした行為は、権利変換の手続きそのものを違法、無効にするものであったにもかかわらず、この総会に出席していた、区の担当部長以下6人の区職員は、どのような「指導、監督」責任を果たしたでしょうか。熊本区長は、どう指示したのでしょうか。
    本年3月の権利変換計画の駆け込み的認可にいたる過程は、行政の「指導、監督」責任放棄を如実に証明しています。行政のこのような責任放棄は、厳しく断罪されるべきです。
  8. 二子玉川の再開発は、先の世田谷区長・区議選挙でも大きな争点になりました。この再開発はとめる、税金投入はしないとはっきり公約した区長候補と、再開発見直しをいう区長候補が、あわせて6割近くを得票し、本件訴訟の被告である熊本区長は、再選されたものの4割そこそこの得票でした。与党多数だった議会勢力も、与野党伯仲に大きく変わりました。民意はここにも表れています。
    「都内最大の民間再開発」(都民間開発課)といわれる本件再開発では、千数百億円の事業費中、七百億円という全国でも類例のない巨額で比率が桁外れに大きい税金投入が計画されています。法と民主主義の原則に照らして、不法で異様なこの構造を打破するために、二子再開発への公金支出差し止め請求が支持されることを強く希望します。

添付資料

  1. 事業計画・組合設立認可申請に対する口頭意見陳述(要旨) 2004年9月14日
  2. 世田谷区二子玉川東地区再開発計画(とくに権利変換)の現況にかかわる件 2006年12月27日
  3. ふたたび世田谷区二子玉川東地区再開発計画(とくに権利変換)の現況にかかわる件 2007年1月12日

以上

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